野原 克仁

Katsuhito Nohara

サブテーマリーダー

立教大学/観光学部観光学科

気候変動が自然環境(地域固有資源)に及ぼす影響について、経済学の見地から理論的・実証的に分析してきた。本プロジェクトでは、テーマ5サブテーマ2のサブテーマリーダーを務め、気候変動による自然災害の激甚化が農業や製造業に与える影響および適応策に関する経済評価手法の開発を目指す。専門は、環境経済学。

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概要

気候変動を主因とする台風や水害の規模の大型化によって生じる、被災地での農作物被害や製造業における生産量の減少、サプライチェーンを通じた非被災地の生産への影響、マクロ経済に与える影響との関係を明らかにする経済モデルをそれぞれ開発し、加えて災害の経済評価手法を開発することで適応策を検討する。

具体的には、以下の4つのモデルを開発する。

  1. 水害などの自然災害による農業部門への経済影響を分析するため災害評価農業経済モデル
  2. 水害などの自然災害による製造業部門(業種別)への経済影響を分析するための業種別災害評価経済モデル
  3. サプライチェーンを通じた非被災地の生産への影響を分析するための47都道府県日本経済モデル
  4. 自然災害のマクロ経済影響を分析するためのマクロ経済モデル

これらのモデルの開発を通じ、将来の気候変動による自然災害が地域別(市町村別・都道府県別)及び日本全体に与える経済影響のシミュレーション分析を行うとともに、適応策を評価する。

研究のアウトライン

目標

  • 気候変動による自然災害が農業や製造業、日本のマクロ経済に与える影響を分析する4つの経済モデルを開発する
  • 開発したモデルを用いて、将来の気候変動による自然災害が与える農業、製造業への地域別影響、及び日本のマクロ経済への影響をシミュレーションするとともに、適応策を評価する

研究対象と計画

  • 災害評価農業経済モデルの対象は、市町村別の農家所得
    災害を含め、農業所得に影響を与える要因を考慮したモデルを構築し、計量経済学的手法を用いて過去30年程度の間に蓄積された全市町村のデータを解析する。パラメータ推計を通じて、中でも水害が農業所得に与える影響を明らかにし、開発したモデルを用いて、将来の自然災害による農業所得への影響を市町村別にシミュレーションする。
  • 災害評価製造業モデルの対象は、市町村別の製造業部門
    気候変動によって生じる台風や水害による被害が被災地の製造業の生産に及ぼす影響を考慮したモデルを構築し、計量経済学的手法を用いて過去30年程度の間に蓄積された全市町村のデータを解析する。パラメータ推計を通じて、災害が市町村別・業種別の生産に与える影響を明らかにし、開発したモデルを用いて、将来の自然災害の大規模化による製造業部門への影響を市町村別にシミュレーションする。
  • 47都道府県日本経済モデルの分析対象は、都道府県別の経済活動全般、特に、農業生産、製造業及び地域別GRP
    応用一般均衡モデルの手法を用いて、各都道府県の産業構造を考慮した都道府県別経済モデルを構築し、それを日本全体でリンクすることで、47都道府県日本経済モデルを構築する。このモデルを用いて、水害などの自然災害が生じた地域における被害の経済影響が、その都道府県の被災地と取引関係のある他の都道府県の生産に及ぼす影響(サプライチェーンを通じた影響)を分析する。その結果、被災地域の生産量の減少が、それを生産要素として利用して産業に及ぼすマイナスの影響、また、同じ財を被災地外で生産する業種へのプラスの影響など、都道府県間のサプライチェーンを考慮した都道府県別経済影響を明らかにする。
  • マクロ経済モデルが対象とするのは、日本のマクロ経済指標
    自然災害による経済被害を考慮したマクロモデルを構築し、非線形モデル分析手法を用いて、モデルを開発する。開発したモデルを用いて、将来の災害ショックがマクロ経済にどのような影響を及ぼすか、また、経済をもとの成長経路に戻すためにはどのような財政金融政策や適応策を実施すべきかについて明らかにする。

想定している適応策

  • 治水対策