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日引聡(東北大学大学院経済学研究科)

概要

気温上昇などの気候変動が農業部門に及ぼす経済影響と適応策を評価する手法の開発、及び、健康影響と適応策を評価する経済評価手法を開発する。

農業部門の経済影響及び適応策の評価手法の開発においては、以下の3つのモデル

  1. 気温や降水量などの気象条件が農業所得に与える影響を分析する農業所得モデル
  2. 気象条件が土地利用(作物選択)に与える影響を分析する土地利用モデル
  3. 47都道府県農業経済モデル

を開発し、そのモデルを用いて、将来の気候変動による地域別(市町村別あるいは都道府県別)農業部門への影響をシミュレーションし、適応策のあり方を評価する。

健康影響と適応策の経済評価手法の開発においては、所得や地域性などの経済的・地域的・社会的要因を考慮した健康評価を行う健康被害モデルを構築し、市町村別に気温上昇の影響を評価する手法を開発し、適応策を明らかにする。

プロジェクトのフレームワーク

目標

  • 気温上昇など気候変動が農業に与える影響を分析する3つの経済モデルを開発する
  • 気温上昇が健康に与える影響を分析するモデルを開発する
  • 開発したモデルを用いて、将来の気候変動による農業影響や健康への影響を地域別にシミュレーションするとともに、適応策を評価する

研究対象と計画

  • 農業所得モデルの対象は、市町村別の農家所得
    経済理論に基づいて、気温などの気象条件をはじめ、農業所得に影響を与える要因を考慮したモデルを構築し、計量経済学的手法を用いて過去30年程度の間に蓄積された全市町村のデータを解析することで、モデルのパラメータを推計し、モデルを開発する。パラメータ推計を通じて、中でも気温などの気象条件が農業所得に与える影響を明らかにし、開発したモデルを用いて、将来の気象条件の変化による農業所得への影響を市町村別にシミュレーションする。
  • 作物別土地利用モデルの対象は、作物別の土地利用面積
    経済理論に基づいて、気温などの気象条件をはじめ、作物別土地生産性に影響を与える要因を考慮したモデルを構築し、計量経済学的手法を用いて過去30年程度の間に蓄積された全市町村のデータを解析(モデルのパラメータを推計)し、モデルを開発する。パラメータ推計を通じて、中でも気温などの気象条件が作物別の土地利用に与える影響を明らかにし、開発したモデルを用いて、将来の気象条件の変化による作物別の土地利用の影響を市町村別にシミュレーションする。
  • 47都道府県日本農業経済モデルの分析対象は、都道府県別の経済活動全般、特に、農業生産及び地域別GPD
    応用一般均衡モデルの手法を用いて、各都道府県の産業構造を考慮した都道府県別経済モデルを構築し、それを日本全体でリンクすることで、47都道府県日本農業経済モデルを構築する。このモデルを用いて、気温上昇によって生じる農業部門の都道府県別生産性への影響が、直接その都道府県の生産に与える影響に加え、都道府県間の農作物取引を通じて、影響が伝播する効果を分析する。その結果、各都道府県の農業生産や日本全体の農業生産に与える影響、また、農作物を生産要素として利用して産業(たとえば、食品工業など)に及ぼす影響など、間接的な経済影響についてもシミュレーションし、都道府県別の影響を明らかにする。
  • 健康モデルの対象は、市町村別の死亡率
    経済理論に基づいて、気温などの気象条件をはじめ、市町村別の死亡率に影響を与える要因を考慮したモデルを構築し、計量経済学的手法を用いて過去30年程度の間に蓄積された全市町村のデータを解析することで、モデルのパラメータを推計し、モデルを開発する。パラメータ推計を通じて、中でも気温などの気象条件が死亡率に与える影響を明らかにし、開発したモデルを用いて、将来の気象条件の変化による死亡率(特に熱中症)への影響を市町村別にシミュレーションする。

想定している適応策

  • 暑い時期をずらした栽培時期の変更
  • より高い気温に適した作物への転換
  • ヒートアイランド現象緩和による気温低下策(高木の植樹による日陰エリアの拡大、道路への水の散布など)