加藤 博和

Hirokazu Kato

サブテーマリーダー

名古屋大学/大学院環境学研究科 附属持続的共発展教育研究センター

交通活動に伴うCO2排出量をライフサイクルアセスメントの手法を用いて包括的に計測する手法を開発し、交通システムや都市の脱炭素化施策検討に活用できるよう取り組んできた。本プロジェクトにて交通システムへの気候変動の影響を評価し適応策を見出すことで、脱炭素化と両立できる交通システムの将来像を示す。専門は土木計画学。

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概要

気候変動が日本の交通・輸送システムにどのような影響をもたらすかを予測し、それに対応してどのような施策が必要となるかについての方向性を明らかにすることを目的とする。影響の中で最も大きいのは、気候変動による台風の強大化やゲリラ豪雨の頻発化などの極端気象の増加であると考えられるが、他にも気温上昇による観光を中心とした交通需要の変化や、海面上昇による港湾や海岸沿いの道路・鉄道網への対策強化が必要になるなど様々考えられる。これら諸影響を網羅的に整理するとともに、極端気象の影響については細かな区間・地区単位で脆弱性の変化を推計し、各区間・地区の重要性を加味して対策実施の優先度を決定する手法を開発し、優先度の算定を試みる。さらに、優先度の高い地区をケーススタディとして取り上げ、今後の交通システム低炭素化の流れを踏まえつつ、具体的な対策を提示する方法論を構築し適用する。

研究の流れ

目標

  • 気候変動が日本の交通・輸送システムに及ぼす影響やその社会経済への波及についての全体フローを提示する。
  • 交通網の自然災害に対する脆弱性を全国の区間(主要駅・都市間を想定)・地区(市区町村を想定)や輸送拠点の単位で定量評価し、その気候変動による変化を予測するための方法論を構築し、施策実施優先度の試算結果を得る。
  • 低炭素化と気候変動適応を両立できる交通・輸送システム変更の方向性を大都市や中小都市で検討する方法論を構築し試算結果を得る。さらに実際の都市に適用し、交通計画の変更を提言する。

研究対象と計画

  • IPCC報告書や既往の調査研究のレビューをもとに気候変動が交通・輸送システムに及ぼすと考えられる影響のリストを作成するとともに、社会経済的影響波及の全体フローをまとめる。
  • 明らかにした気候変動が交通・輸送システムに及ぼす影響のうち、主要なものについて影響推計手法をつくり、全国各区間・地区(市区町村単位を想定)や輸送拠点(営業所、駅、バスターミナル、空港等)の影響度を推計する。
  • 全国の水害や土砂災害に関する危険度のデータを収集し、それと交通網とを重ね合わせ、現状でリスクの高い区間・地区を抽出する。そして、極端気象の増加による交通障害のリスク増加を推定する。加えて、リスクの高い区間について、交通量や代替路の存在から重要度を定量化し、それとリスクとを合わせて対策優先度を算定する。
  • 以上の結果を合わせて、国全体としてどこの区間・地区・輸送拠点の対策を優先すべきかの順位付けを行い、対策優先度が高くなった地区の中から大都市および中小都市1箇所ずつをケーススタディとして、交通・輸送システムへの気候変動の影響を推計する。この際、これまで構築してきた、災害時におけるQOL(Quality Of Life)低下の評価モデルを適用し、アクセシビリティ低下や物流混乱に伴うQOL低下を評価する。さらに他の気候変動起因の諸影響も加味した評価を行って、交通網改善策を提示する。

想定している適応策

  • 鉄路・道路の迂回路整備、及び橋梁等の構造物の改良・付替
  • 鉄道の駅や車庫、バスのターミナル・営業所等、拠点となる施設の移転
  • 水害等発生時の車両の退避計画策定等のソフト施策