木所 英昭

Hideaki Kidokoro

サブテーマリーダー

水産研究・教育機構/水産資源研究所 水産資源研究センター

水産資源の変動メカニズムと海洋環境との関係を研究してきた。本プロジェクトではサブテーマ2(4)のサブテーマリーダーを努め、気候変動による水産資源や養殖業への影響評価、および水産業の社会経済シナリオを考慮した適応策を検討し、漁業・養殖業の現場や行政施策へ反映できる成果を目指す。専門は、水産資源学。

Profile Picture

概要

本研究では、プロジェクトにおける共通シナリオを用いて水産重要種の漁期・漁場の変化を予測し、各地域における漁業の影響評価(増える魚種、減る魚種)を行う。特に、気候変動への影響に関する知見の少ない底魚類を対象として、各地の底びき網で漁獲される主要底魚類の分布・漁期・漁場の変化を把握し、環境要因を考慮した予測モデルを作成して精度向上を図って評価する。また、増養殖業においても藻場漁場への高精度の影響把握に不可欠な地理的特性による局地的要因の抽出と、栄養塩供給過程の変化が与えるワカメ養殖への影響を把握して影響を評価する。その結果を基に、各地の増養殖業における適応策オプションの有効性を評価し、地方自治体レベルでの経済的な視点も含めた適応策策定を支援する情報提供を行う。

底びき網漁業の漁場変化

気候変動による漁業への影響として、日本海と東北太平洋側の底びき網で漁獲される資源への影響を評価する。基本的に、水温上昇によって水産資源の分布や漁場が北上することが予想されるものの、魚種や海域によっては応答特性が異なり、影響の程度や適応策も異なることが想定される。

ワカメ養殖への影響評価と適応策

気候変動による養殖業への影響として、三陸と鳴門のワカメへの影響を評価する。三陸では栄養塩の供給を通した影響が想定される一方、鳴門のワカメは水温上昇そのものが影響を及ぼすことが想定される。そのため、海域によってワカメ養殖業への適応策も異なってくる。

目標

  • 日本周辺海域における沖合底びき網漁業の漁期・漁場の変化把握
  • 主要魚種の漁期・漁場の変化、および主要港における魚種組成の変化予測
  • 東北太平洋沿岸域のワカメ養殖業への栄養塩供給過程の影響把握
  • 瀬戸内海の藻場・増養殖業への気候変動に関する局地的要因の解明
  • 地域による適応策オプションの有効性把握

研究対象と計画

  • 東北太平洋側、日本海、東シナ海北部における沖合底びき網の漁獲データの時空間分布を解析し、魚種・海域による変化概要・相違を抽出するとともに、気候変動による予測モデルを開発する。
  • 主要魚種を対象として、既存の漁場・分布水温に関する知見と共通シナリオとして提供される水温データを用いて将来予測を行い、各地の主要港における影響を予測する。
  • 瀬戸内海の藻場生態系への水温以外の局地的影響要因を、既存の観測結果と環境情報を用いて抽出する。
  • 三陸のワカメ養殖場に観測センサーを設置し、水温や栄養塩類の変化を観測するとともに栄養塩類が与えるワカメ養殖への影響予測モデルの精度向上を行う。
  • 以上の調査・解析によって高精度化した予測モデルと共通シナリオを用いて将来予測を行う。
  • 予測結果を基に適応策の有効性と経済的評価を含めた将来の課題等を地域別に検討する。

想定している適応策

  • 主要魚種の漁期・漁場の変化に対応した漁業政策
  • 各地域で水揚げされる魚種組成の変化予測と効率的な漁業構造の構築
  • ICT技術を用いたリアルタイム環境データ入手による増養殖作業スケジュール作成
  • 改良品種、新たな養殖品種による有効性の把握と適応策オプション提示