西浦 博

Hiroshi Nishiura

サブテーマリーダー

京都大学/大学院医学研究科

感染症や環境医学を中心とした現象論の数理モデル化と疫学的検討を専門に、サブテーマ1(3)2で気候変動の健康影響に関する研究手法の開発とモデル実装研究に取り組んでいる。特に、デング熱を含む感染症の流行拡大や熱中症に対するヒト適応の在り方について検討し、加えて新型コロナウイルス感染症と気候変動の関わりについても分析を進めている。専門は理論疫学、感染症疫学、生物統計学。

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概要

気候変動適応法の影響を受け、科学的根拠に基づく地域気候変動適応計画の策定やより空間的に精緻で妥当な気候変動の影響把握が求められている。地球温暖化による感染リスクの変動を中心として、気候変動が注目を集めてから久しいが、包括的に健康リスクの変動を定量化した頑健な予測システムは未だ形作られていない。本研究の目的は、健康リスク(感染症と熱中症)に特化した統計モデリングプロジェクトを展開し、自然生態の変化など背景にあるメカニズムを活用して健康リスクの定量化が可能な非線形モデルを構築し、気候変動に伴う影響予測モデルの実装と土地利用の変化など適応の潜在的効果を評価する体系を構築することである.気候変動及び広い意味での環境(立地や土地利用を含む)と自然生態、および、ヒトのホメオスタシス破綻との関わりが明確になり、ひいては気候変動の影響としての疾病発生が全国および地域の両レベルで明示的に理解されることにより、気象データや地理的な立地環境等を駆使した蚊・ダニ媒介感染症の流行リスクおよび熱中症リスクに関する予測モデルを社会実装する。また、空間情報を駆使した気候変動とヒト感染症との関わりを可視化することで、推定の産物を具体的な地域計画に役立てる。

図. 環境条件と土地利用を入力情報とした感染症発生リスクのモデル化

目標

  • 気温の長期観測データを基に、デング熱およびマラリアの流行リスク予報を提供
  • 気温データと湿度データに加えて土地利用情報などヒトの脱水と不快への影響を定量化し、それに基づく熱中症予測モデルの実装を高空間解像度で実施
  • 空間レベルで精密な健康リスクの定量化(健康リスクの見える化)を達成

研究対象と計画

  • 気温と昆虫媒介感染症に特化した研究
    蚊媒介感染症ではデング熱とマラリア、ダニ媒介感染症では重症熱性血小板減少症候群に関する教室内独自のリスク評価研究(モデリング研究)
  • 気温、湿度、輻射熱、土地利用などを予測因子とした熱中症の予測モデリング
    気温と降水量などの気象データと熱中症の関係について理論疫学的研究手法を用いて抜本的な科学的理解の改善に取り組む
  • 土地利用などのビッグデータを駆使した高解像度の空間環境情報と健康リスクの見える化
    1㎞×1㎞メッシュや町丁字レベルの地図と地理的情報システムを利用することによって、健康リスクがどのように空間的に異質に変化するのかを高い精度で把握

想定している適応策

  • 感染症および熱中症の発生状況の分析と対策の方針整理
  • クールシティ化、ライフスタイルの変更、熱中症弱者対策のコミュニティづくり
  • 媒介昆虫が生息しにくい環境整備、検疫体制の見直し、高齢者等の弱者への支援体制整備
  • 地理的局所地域での適応策策定に資するモニタリングおよび影響予測情報の提供