第11回 S-18セミナー:山地における土砂災害-森林による減災効果とその限界-(開催報告)

 S-18研究プロジェクトでは、一般の皆様も交えて広く気候変動問題を考えることを目的にシリーズでS-18セミナーを開催しております。第11回目となる今回は、本プロジェクト、サブテーマ2(3)のメンバーでもある森林研究・整備機構の經隆 悠氏をお招きし、山地における土砂災害について解説していただきました。報告と当日の資料を以下に掲載いたします。

◆ 開催日時
2024年7月23日 (火) 15:30-16:40 (最大延長17:00まで)

◆ タイトル
「山地における土砂災害-森林による減災効果とその限界-」

◆ 講  師
 經隆 悠ツネタカ ハルカ 氏 (森林研究・整備機構)

◆ 概  要
 気候変動に伴う豪雨の増加により、山地で斜面が広範囲で崩壊し、流下した土砂による甚大な被害が生じています。現在、我が国の山地のほとんどは森林に覆われており、森林の根系による斜面崩壊の抑制などの一定の減災効果が期待できます。その一方で、崩壊が発生してしまうと土砂だけでなく大量の流木が発生・流下し、被害が拡大する危険があります。
 本セミナーでは、森林による土砂災害に対する減災効果とその限界についてご紹介します。

◆ 報  告
 セミナーでは、1)斜面崩壊のメカニズム、2)森林の斜面崩壊防止機能、3)斜面崩壊を起こす降雨、4)森林の斜面崩壊防止機能の力学モデル、についてご紹介頂きました。先ず山地の土層と基盤層、木の根、土層内の地下水の関係が説明されました。森林の根系は土層に貯まった地下水による崩壊に対して抵抗力となること、この抵抗力は伐採後10年から20年で最も小さくなること、皆伐が行なわれた山地の斜面崩壊の発生数の推移に基づいて、時間が経つと木の成長により根系の効果が発揮されること等が紹介されました。
 続いて、近年生じた土砂災害と降雨の関係について説明されました。100年に一度程度の降雨により大規模な斜面災害が多く発生していること、降雨波形には依らず200-400ミリ程度の雨量により斜面崩壊が発生していること、この強度の雨に対しては森林が成熟していても崩壊を防ぐことは困難と考えられることなどが紹介されました。
 最後に、山地の土層と基盤層、木の根、地下水の関係を説明する力学モデルの解説がありました。これにより「森林の回復が斜面崩壊を防止」→「土層厚の回復」→「森林の斜面崩壊機能の低下」→「斜面崩壊の発生」という森林の成長と土層厚の回復、斜面崩壊という一連のサイクルが説明されました。
 質疑も活発に行なわれ、ご出席の皆様の関心の高さがうかがえました。

◆当日の資料


◆ 問 合 せ 先
 S-18プロジェクト事務局(茨城大学水戸駅南サテライト内)
 電話番号:029-297-3152 / E-mail:info[at]s-18ccap.jp ※[at]を@に置き換えてください。