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概要
研究課題名 | 気候変動影響予測・適応評価の総合的研究 |
研究代表者 | 三村信男(茨城大学 地球・地域環境共創機構) |
研究期間 | 2020~2024年度 |
研究の背景と目的
世界的な気候変動の影響の顕在化や我が国における悪影響への対処の必要性を背景にして、2018 年に「気候変動適応法」が成立しました。2025年には次の全国的な影響評価とそれに基づく適応計画の見直しが行われます。同時に、2019年の台風19 号災害など気象災害の激化などに対応して、自治体や企業でも適応策の立案・実施が必要とされています。国際的にはパリ協定の実施に向けた科学的貢献も求められており、こうした国内外の課題に応えるため、本プロジェクトでは、「我が国の気候変動適応の取り組みを支援する総合的な科学的情報の創出」を目的にして、最新の科学的知見に基づいて影響予測・適応評価に関する研究を行います。
全体目標
2025 年に予定されている気候変動影響評価及びその後の気候変動適応計画の見直し、地方公共団体による地域気候変動適応計画の策定、国際的取り組み等への貢献を視野に、「気候変動適応法」に基づく適応への取り組みを支援する気候変動影響及び適応策に関する新しい科学的情報を創出する。
個別目標
- S-18全体で総合的な影響予測・適応評価を実施するためのフレームワークの構築及び必要な共通シナリオ(気候シナリオ及び社会経済シナリオ)の整備・配信
- 地方公共団体での適応計画・適応策の検討に資する高解像度の気候変動影響予測手法の開発・高度化
- 共通シナリオを用い、6分野(「農業、森林・林業、水産業」、「水環境・水資源」、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「国民生活・都市生活」)を対象にした全国統一的な気候変動の影響予測の実施
- S-18全体の成果を取り纏めた、地方公共団体の適応計画立案支援のための統合データベース構築及び統合評価モデルの開発
- 気候変動影響と適応策の効果に関する経済評価の実施
- 気候変動影響の地域性の把握と分野・項目毎の脆弱な地域の抽出
- 複数の適応オプションを想定した適応シナリオの開発と適応策の効果の評価
- IPCC AR7やパリ協定における国際的取組への貢献
- 国内の他の研究プロジェクトや関係府省庁の関連事業との積極的な研究交流の推進
- 気候変動適応に関する業務を行う民間企業やNPO、マスコミなどとの情報交換に基づく、多様な知見の取り込み
研究の内容
本プロジェクトでは、統一的な全国規模の影響予測・適応評価をめざして、次の5つのテーマが密接に連携・協働して研究を推進します。
- 【テーマ1】総合的な気候変動影響予測・適応評価フレームワークの開発
共通シナリオ(気候シナリオ及び社会経済・適応シナリオ)の整備や成果を取り纏める統合データベース構築、統計的な影響予測・適応評価手法の開発、適応計画の評価・分析手法の開発などを行います。 - 【テーマ2】農林水産業分野を対象とした気候変動影響予測と適応策の評価
農作物、畜産、林業、水産業において重要度の高い品目を対象に、気候変動影響予測と適応策の評価を行います。 - 【テーマ3】自然災害・水資源分野を対象とした気候変動影響予測と適応策の評価
流域および沿岸域における気候変動による水災害の影響予測と将来の社会動態の変化を含めた総合的な予測手法の開発や高度化と適応評価を行います。 - 【テーマ4】国民の生活の質(QoL)とその基盤となるインフラ・地域産業への気候変動影響予測と適応策の検討と評価
「国民の生活の質(QoL)」を対象に、国民生活とその基盤となる社会基盤インフラ・地域産業への気候変動の影響予測と適応策の評価を行います。 - 【テーマ5】気候変動影響及び適応策に関する経済評価手法の開発
農業や健康部門おける影響と適応策を対象に経済評価手法を開発します。また、台風や水害などによる災害の経済評価手法を開発することで気候変動の社会経済影響を評価します。
環境政策等への貢献
本研究の成果は、以下の項目への貢献を目指しております。
国・地域レベル
- 2025 年に予定されている適応計画見直しに貢献
- 脆弱な地域の把握や適応計画の立案・実施など自治体の取組への寄与
国際レベル
- IPCC 第7次評価報告書やパリ協定における国際的取組への貢献
- 我が国と地域の将来に向けて、気候変動に対してresilient(強靭)な社会の在り方に関する提言